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世界共通の星空

今回は隠岐の島町のALTダンケンさん(アメリカのワシントン州出身)からのゲスト記事です!星空について読みましょう。



 世界中のどこに行っても、星は同じです。遠く北や南に行かない限り、東西どこでもほぼ同じ星座が見られます。しかし星自体が変わらなくても、星についての語り方などは地域によって変わります。


 日本に来る前、出身校の博物館で働いていました。そこでは恐竜の骨や遺物、絵画や動物の展示など、様々なものがありました。私の仕事は博物館のプラネタリウムで夜空の物語や科学的な話をお客さんに教えることでした。そして夏休みにイエローストーン国立公園に行って、お客さんが使えるように望遠鏡を設置して、見える物の説明をしていました。日本も含めて、様々な国から訪れた人に出会えました。どこから来たかに関わらず、皆が大体同じ星をつないで星座を作っていて、それが素晴らしいと思いました。


 隠岐でも夜空について人に話す時間を作ることができました。小さな望遠鏡を買って、土星の環や月のクレーター、去年の夏に近く通ったNEOWISE彗星などを友達と一緒に見ています。


 しかしすべてが同じではありません。アメリカにいる時、ここより北の方に住んでいました。星座は同じですが、慣れている位置とは少し違う位置に見られます。出身地のワシントン州では、「北斗七星」という星座が年中夜空の真ん中ぐらいに見られました。私は北斗七星を碇のように思って、そこから他の星を見つけていました。でも今隠岐で上を向いたら、北斗七星が見つからない時もあります。赤道に近づけば近づくほど、北極星と北斗七星の位置が低くなります。そして北緯36°の島後では、北斗七星が水平線に近くなって山が邪魔して、ちょうど見えない時期があります。


星と星座が同じでありながら、いつも私が期待している位置にあるのではありません。星を見ていると心が落ち着きますが、生まれ育った場所から遠く離れているとも感じます。


 変わるのは星の位置だけではありません。星についての物語も変わります。私の出身地では、様々な話を語っていました。例えば、ヘルクレスの話。カシオペアとクジラの話。オリオンと猟犬がウサギを追いかけて空を走っている話。


これら私が知っている話の登場人物がすべて見られなくても、日本の星の物語を学ぶことを楽しんでいます。特に好きなのはアルタイルとベガ(彦星と織姫)に関わる七夕の話です。同じ星であっても、子どもの頃から聞いた物語とはとても違います。


私が知っている物語はギリシャ神話に由来します。アルタイル(彦星)はわし座の一部です。そのわし(アクイラ)はゼウス(ギリシャ神話の主神)が投げる落雷を持つキャラクターです。他の話によると、わしはわしではなく、白鳥の偽装をしている愛の女神、アプロディーテだとも言われます。


 ベガ(織姫)はこと座の一部です。普段は琴(英語ではハープ)に見られますが、ハゲワシにも見られます。ハゲワシとして見たら、わし座と隣の白鳥座と一緒にして、3羽でヘルクレスの物語に出る「ステュムパーリデスの鳥」になります。しかしハープとして見たら、こと座が音楽家であるオルフェウスの物語につながります。

 神話によると、妻がヘビにかまれて亡くなった後、オルフェウスは冥府に入って、妻を連れて帰らせるように冥府の神であるハデスに願いました。最初はハデスが断りましたが、オルフェウスがハープを引くのを聞いたら、条件付けで許しました。その条件は、冥府から出るまで、オルフェウスが後ろに振り向かないことです。オルフェウスはその条件に同意して妻を連れて帰ろうとしました。しかしちょうど出る前に、後ろを振り向いてしまったので、妻が永遠に冥府に残ることになりました。


この3つの星座(わし座、こと座、白鳥座)と3つの星(アルタイル、ベガ、白鳥座の中にあるデネブ)は合わせて「夏の大三角」と呼ばれます。宇宙の中で、ここはすごい所で、ちょうど見えない所に色々なものを隠しています。初めて発見されたブラックホール(はくちょう座X-1)はここにあります。そのブラックホールが見えなくても、中型望遠鏡を使えば、こと座の下部分にある「環状星雲」(かんじょうせいうん、英語:Ring Nebula)などの美しいものが見られます。


 小さい頃からずっと夜空に引き付けられていたので、勉強することができて、そして仕事として夜空についてさらに学ぶこともできて、とても幸運でした。今は仕事が変わって、生まれ育った場所から遠く離れていても、私が行く場所の空はほとんど変わっていません。そして今、冬が終わって夜が少しずつ暖かくなると、また望遠鏡を出して星を眺めることを楽しみにしています。



筆者:ダンケン(外国語指導助手、アメリカのワシントン州出身)

翻訳:カトリーナ

写真:Wikimedia Commons

カバー写真:Wix Media

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