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ポーランドの最も有名な伝説の生き物

 若い女性だけ触ることができるユニコーン、一目で死をもたらすバジリスク、体がライオンと鷲の特徴を組み合わせたグリフォンなど。「ハリーポッター」を読んだ人たちは、この空想上の動物の名前ぐらい知っているはずと思いますが、大昔からそれがヨーロッパ文化の一部であり、数えきれない物語や言い伝えに登場しています。ポーランドの伝説にも、実際に存在していない動物の多種類が見られます。その中で間違いなく最も有名なのは、ヴァヴェルの竜です。今回はそのことについて紹介したいと思います。

ヨーロッパの伝説にデイル竜のイメージ

 まずは、「竜」と言えば、どのようなものをイメージしていますか?古代中国で初めて想像され、日本へも普及してきた蛇を思わせる細長い姿ではないでしょうか?ヨーロッパの伝説などに出ている竜はちょっと違います。なぜなら、体が翼のあるトカゲのような、火を吐いている恐るべき獣として描かれています。このような竜は、人と集落に害を及ぼしたものですので、ヨーロッパの伝説などでは悪役をやっています。


 竜は想像上の動物ですが、「ヴァヴェル」というのは本当の場所です。ポーランド南部にある元の首都、クラクフ市で建てられたお城です。ヴィスワ川の沿岸の丘に位置しているヴァヴェル城は11世紀から16世紀まで国王様の席でしたので、国の歴史や文化に強くつながっています。そういうわけで、ポーランドにとってとても大事な場所です。それに加えて、ヴァヴェル城はクラクフ旧市街と共にユネスコ世界遺産の認定を誇り、外国人観光客からすると、訪れないとポーランドから帰れない観光地です。

ヴィスワ川から見たヴァヴェル城

 歴史の長いヴァヴェル城はさすがに、いろいろな伝説や昔話の舞台になりました。その一つは竜について伝説です。バージョンによって詳細が少し異なっていますが、説は次のようです。


 昔々お城が建てられた丘の麓にある洞窟で恐ろしい竜は宿っていました。お腹がすいたら、洞窟から出て、捕まった農場の動物や人も餌にしてしまいました。城下で住んでいた人たちが怖がって、非常に困りましたので、誰かに助けを求めました。それで、ピカピカの鎧を着た勇気のある騎士がやってきて、激しい戦闘の結果、恐ろしい竜を打ち負かした—


 —ということが、このような話では決まっているようですが、ヴァヴェル城の場合、それがそうではありません。竜を倒そうと思った、勇気のある騎士が次々と竜に負けてしまったからです。騎士剣の力で竜を打ち負かせないことが明らかです。挙句の果て、竜に勝利したのは、貧乏でも頭が賢い靴屋さんです。城下町の絶望を見て、「何とかしないとー!」と思ったこの靴屋さんは、毛皮などで本物とそっくりに偽物の羊を作って、その中に硫黄(いおう)を詰め込みました。できたものを竜が宿った洞窟の入り口に置きました。


 そうすると、洞窟から出ようとした竜は、偽物の羊をすぐ目にして、本当の動物と思って、一口で食べてしまいました。しばらく何もなかったですが、羊に詰め込んだ硫黄でお腹が突然苦しくなりました。水を飲めばよくなると考えましたので、ヴィスワ川の沿岸に座って、川水の半分ほどを飲んだ結果、竜のお腹が破裂しました。このように靴屋さんが竜を打ち負かしました。

火を吐く竜の像

 伝説は伝説なのですが、ヴァヴェル城が建てられる麓に洞窟が実際にあり、切符を買えば入館できます。竜も見ることができます。洞窟の入り口の近くに、火を吐く竜の像があるからです。クラクフ市内のお土産さんも訪れれば、キャラクターにした竜のキーホルダーやおもちゃ、竜を表現している小物に商品棚があふれています。他にもいろいろありますが、ヴァヴェルの竜はクラクフのシンボルの一つになったことが言えます。


 また、伝説の由来についてですが、竜のことが初めて「ヴィンセンティの年代記」という11世紀末~12世紀頭に作成されたポーランドの歴史書に出て、その前にも口で伝えた話として知られていたかもしれません。19世紀からは、出版されたポーランドの伝説集に必ず含まれて、子ども向けの教科書にも載せられました。有名なポーランド人の作家も小説でこの伝説を改めて描き、芸術家は竜を表現した作品を作っていました。20世紀後半から現在もコミックスや映画、ポーランドのポップカルチャーには登場するか、その影響が見られます。ヴァヴェルの竜は、日本語版グーグルで「ポーランドの伝説」の検索結果としてすぐ出るほど、有名な話です。


 最後になりますが、この伝説は日本語に翻訳され、きれいな絵本の会式で出版されました。隠岐の島図書館で貸し出しできますので、ポーランド一の空想上の動物に興味があれば、ぜひおすすめします!


筆者:イザベラ

写真:Wikimedia Commons

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